ライトソルトゲームに革命をもたらしてきたDAIWA「月下美人」シリーズ。その中でも今回紹介する「26月下美人 BF TW PE SPECIAL」は、PEライン専用設計のベイトフィネスリールとして注目を集めています。これまでナイロンやフロロが主流だったベイトフィネスにおいて、PEラインを本格的に活かすリールがついに誕生しました。今回はその技術的背景から使用感、他モデルとの比較まで、徹底的にインプレッションします。
月下美人シリーズの進化と「PE SPECIAL」誕生の背景
2005年、DAIWAが初めてライトソルト専用ブランドとして送り出したのが「月下美人」シリーズ。アジングやメバリングといった繊細な釣りを支える専用設計のロッドやリールは、登場以来アングラーたちの信頼を集めてきました。
そんな月下美人シリーズが今回挑んだのが「PEライン×ベイトフィネス」という領域です。近年、PEラインの細糸化と強度向上が進み、より軽いルアーやジグ単を正確に投げるニーズが増加。これに応える形で誕生したのが「26月下美人 BF TW PE SPECIAL」です。
アジやメバルといったターゲットは、時にわずかな水流変化に反応する繊細な魚。PEの感度を最大限に活かせるベイトフィネス設計は、まさにライトソルトの進化形といえます。
圧倒的進化!26月下美人 BF TW PE SPのスペックと主要テクノロジー

新モデルでは、軽量化と耐久性の両立を徹底追求。フレームとギア側サイドプレートにはマグネシウム、セットプレートにはアルミニウムを採用し、自重150gという驚異的な軽さを実現しています。一方で剛性も高く、ソルト環境でも安心して使用できる構造になっています。
中核を担うのが、DAIWA独自の「HYPERDRIVE DESIGN」です。4つのテクノロジー(ハイパードライブデジギア、ダブルサポート、アームドハウジング、タフクラッチ)により、滑らかな巻き心地と高い耐久性を長期間維持。
さらに「SS MAGFORCE」と「TWS(T-WING SYSTEM)」を搭載することで、ライン放出の抵抗を最小限に抑えています。特にTWSはキャスト時のラインガイド抵抗を減らす革新技術で、低弾道かつ伸びのあるキャストフィールを実現します。
製品スペック一覧
アイテム | 標準自重(g) | 巻き取り長さ(cm/ハンドル1回転) | ギア比 | 標準巻糸量PE(号ーm) | ハンドルアーム長(mm) | ベアリング(ボール/ローラー) | 最大ドラグ力(kg) | スプール径(mm) | 本体価格(円) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
26月下美人 BF TW 8.5R PE SPECIAL | 150 | 74 | 8.5 | 0.4-50 | 80 | 12/1 | 3.5 | 28 | 56,800 |
26月下美人 BF TW 8.5L PE SPECIAL | 150 | 74 | 8.5 | 0.4-50 | 80 | 12/1 | 3.5 | 28 | 56,800 |
- 右巻き・左巻きの両モデルがラインナップされ、スペック上の違いは巻方向のみです。
- 推奨ルアーウエイトは0.8〜5g、PE0.4号前後での使用が最も快適に扱える設計です。
インプレ①:キャストフィールと飛距離性能
「PE専用」を名乗るだけあって、キャストフィールは非常に軽快。特筆すべきは、軽量ルアーの伸びやかな弾道。0.8g前後のジグ単でも弾道が低く、風の影響を受けにくいキャストが可能。
その核心を支えているのが、G1ジュラルミン製 φ28mm BFスプール(PE専用)です。このスプールは、航空機にも使われる超高強度アルミ合金「G1ジュラルミン」を採用し、一般的なスプールよりも軽量かつ高剛性に仕上げられています。さらに、PEライン専用として設計されており、糸の滑りや放出抵抗を最小限に抑制。スプールの低イナーシャ化(慣性の低減)によって、キャスト初動からスプールが瞬時に立ち上がり、わずかな力でもルアーをスムーズに送り出せます。
その結果、軽量リグでありながらも飛距離がしっかり伸び、着水までの軌道も非常に安定。バックラッシュも少なく、「軽いルアーを狙ったところに通す」ライトゲーム特有のキャストが快適に行えます。
また、SS MAGFORCEが生む低慣性スプールの回転レスポンスは、スピニングに迫るほど滑らか。バックラッシュの発生も少なく、特に向かい風の状況でも安心して投げ込めます。PEライン特有の軽さを殺さずに、飛距離を伸ばせるセッティングはこのモデルの大きな魅力です。

また、TWSによるライン放出のスムーズさが、キャストの“抜け感”を生み出しています。キャスト後のラインの立ち上がりも速く、PEならではの「軽い・伸びる・沈む」を実感できる仕様です。
SS MAGFORCEとTWSの相乗効果も加わり、まさに「“無抵抗キャスト”の極み」といえる仕上がりです。
「SS MAGFORCE(エスエスマグフォース)」
DAIWAがベイトフィネス専用に開発した可変インダクトローター構造のマグネットブレーキシステムです。従来のマグフォースを進化させ、スプールの低イナーシャ化(慣性の低減)を徹底追求。スプールが軽く素早く回転を立ち上げることで、軽量ルアーでもスムーズにラインが放出され、伸びのある低弾道キャストを実現します。キャスト中は自動で磁力が制御され、バックラッシュを防ぎながら飛距離を最大化。さらに、風向きや投げ方が変化しても安定したキャスト性能を発揮し、悪条件下でも安定するブレーキシステム。
インプレ②:ドラグと巻き心地の仕上がり
ライトソルトでは、細糸を使った際のドラグ性能が生命線です。26月下美人 BF TW PE SPは、UTD(アルティメットトーナメントドラグ)と「ドラグ引き出しクリック」を搭載しており、ラインテンションが限界に達する際にクリック音で判別できます。この機能は、暗い夜釣りシーンや風の中でのファイト時に非常に役立ちます。
巻き心地は、HYPERDRIVE DIGIGEARによる滑らかさが印象的。ギア比8.5という高速仕様でありながら、巻き始めのトルク感にストレスがなく、軽いルアーの微妙な抵抗も伝えてくれます。金属フレームによる高剛性とMg素材の軽さが融合し、操作感の心地よさも際立っています。
インプレ③:操作性と実用面での評価
ベイトフィネスにおいて重要なのは「操作時の一体感」です。26月下美人 BF TW PE SPECIALは、リール自体が非常にコンパクトでフィット感が抜群。特に月下美人シリーズのロッドと組み合わせると、バランスが整い、長時間の釣行でも疲れにくいと感じます。
軽量ジグヘッドやマイクロプラグのリトリーブも安定しており、PEライン特有の感度とリニアなレスポンスが魅力。また、クラッチ操作のクリック感もはっきりしており、頻繁なキャストにもストレスがありません。繊細な釣りに特化したベイトフィネスとしての完成度は非常に高いといえます。
26月下美人 BF TW PE SPECIALと25アルファス BF TWの主な違い


左が26月下美人 BF TW PE SPECIAL、右が25アルファス BF TW
項目 | 26月下美人 BF TW PE SPECIAL | 25アルファス BF TW |
---|---|---|
コンセプト | PE専用ベイトフィネスリール(ライトソルト特化) | 汎用型ベイトフィネスリール(淡水・ソルト両対応) |
主なターゲット | アジ、メバル、カサゴなどのライトソルトゲーム | バス、チニング、ライトロックなど幅広い対象魚 |
メインライン設計 | PE専用スプール(ナイロン・フロロ使用不可) | ナイロン・フロロ・PEいずれも対応可能 |
フィールド想定 | 海(ソルト)メイン | 淡水〜海の両用 |
スプールの違い
要素 | 月下美人 BF TW PE SP | アルファス BF TW |
---|---|---|
スプール径 | φ28mm(小径) | φ30mm(標準径) |
スプール素材 | G1ジュラルミン製(PE専用・極薄軽量) | G1ジュラルミン製(汎用設計) |
特徴 | PEラインの放出抵抗を極限まで抑制。低慣性で超軽量ルアー対応。 | SS MAGFORCEにより、より重めのリグにも対応可能な安定感。 |
→ 月下美人の28mmスプールはより繊細な軽量リグ(0.8〜5g)を快適に扱う特化仕様。アルファスは30mm径でキャスト安定性を重視し、やや幅広いルアーウエイトをカバーします。
ボディの違い
要素 | 月下美人 BF TW PE SP | アルファス BF TW |
---|---|---|
素材 | Mgフレーム+ALサイドプレート(軽量重視) | フルアルミ(FULL AL:剛性重視) |
自重 | 150g | 165g |
剛性 | 軽さと操作性優先 | 高剛性・耐久性優先 |
耐塩性能 | ソルト専用防錆構造 | ソルト対応設計だが汎用仕様 |
→ 月下美人は軽さと操作性を最重視したソルトライト専用構造。アルファスはより多用途に使えるオールラウンドフィネス機です。
キャストフィール・ブレーキの違い
要素 | 26月下美人 BF TW PE SP | 25アルファス BF TW |
---|---|---|
ブレーキシステム | SS MAGFORCE(PE専用チューニング) | SS MAGFORCE(汎用セッティング) |
キャスト特性 | 低慣性スプールによる瞬発的な立ち上がり、軽量ルアー特化(~5g) | 30mmスプールによる安定感、やや重めルアーにも対応 |
飛距離傾向 | 軽量ルアーの低弾道キャストが得意 | 中量級ルアーの遠投も安定 |
ターゲットや用途の違い
使用スタイル | おすすめモデル | 理由 |
---|---|---|
アジング・メバリング中心(1g前後のリグ) | 26月下美人 BF TW PE SP | 軽量ルアーのキャスト精度と感度が圧倒的。PE専用構造で糸抜け抜群。 |
バスやチニングなど汎用フィネス | 25アルファス BF TW | ルアー重量・ライン選択の幅が広く、汎用性が高い。 |
セッティングとPEライン選びのポイント
このリールはPE専用設計のため、ナイロンやフロロの使用は不可です。糸の伸びや収縮によってスプール変形を起こす可能性があるため、必ずPEラインを使用してください。
推奨セッティングは以下の通りです。
- PEライン:0.3〜0.5号(推奨は0.4号)
- リーダー:フロロ1.5〜2号(長さ50cm〜1m)
- ルアーウェイト:0.8〜5gのジグ単やマイクロプラグが最適
ラインのテンション管理を丁寧に行い、スプールに均一に巻くことがトラブル防止の鍵です。
メリット・デメリットまとめ
メリット
- 圧倒的な軽さとバランス
- 軽量ルアーでも抜群のキャストフィール
- PEラインを最大限に活かせる専用スプール設計
- ソルト使用にも安心な耐久構造
デメリット
- ナイロン・フロロが使えない(PE専用ゆえの制約)
- 強引なファイトには不向き
- 価格帯がやや高め(約5.6万円クラス)
おすすめのアングラー
- アジング・メバリングでより繊細なアプローチを求める方
- スピニングPEからベイトにステップアップしたい方
- 軽量リグを正確に投げたいベイトフィネス愛好者
まとめ

26月下美人 BF TW PE SPECIALは、単なるベイトフィネスではなく、「PEで投げるための新設計」という明確な目的を持って開発されたリールです。その結果、従来のリールでは得られなかった感度・飛距離・操作性を高次元で両立しています。
ソルトライトゲームの世界において、PEベイトはこれまで“理論上の理想”とされてきましたが、このモデルの登場によって現実的な選択肢となりました。DAIWAが積み上げてきた月下美人ブランドの信頼と技術が融合した、まさに新時代のベイトフィネスといえるでしょう。
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